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2013年 07月 11日

CONTAX RTS

言わずと知れた、旧ヤシカ製CONTAXのフラッグシップ。

CONTAX RTS_c0291635_20584610.jpg

ライカとのレンジファインダー機での競争で優位に立てず、一眼レフでは日本勢に敗れたCarl Zeissはカメラ事業から一旦撤退します。しかしカメラ事業の復活を目論む光学帝国・Zeissが白羽の矢を立てたのが我が日本のヤシカ。ヤシカがエレクトロニクスを手掛け、デザインはかのポルシェが、そしてレンズは勿論Zeissが、という「国際協業」で誕生した新生コンタックスですね(余談ですが…NikonとかCanonとか表記している自分が、ヤシカについてはYashicaと書きたくならないのは何故なんでしょうか?)。

超コンパクト機の「リトルニコン」からまた随分と性格の異なるボディに跳んだねェ、とお思いかも知れませんが、当時明らかに目にしていたのに何らの接点も持たずスレ違ったという点ではどちらも一緒。何しろぼってりしたRTSの鈍重なシルエットは自分の美意識に合わない(笑)と思っていたので…。

さて自分の CONTAX 初体験は、実は本機ではなく都内某所でタマタマ手に取ってしまった 139 Quartz で、この件についてはいずれ別項で触れるつもりですが、まぁその時点で一旦 CONTAX に手を染めてしまっている私が RTS に全く興味が無かったと言えばウソになります(笑)。 しかし、使用する電池は高い(4LR44又は4SR44)し、デザインに余り好意的でないし、といった具合で、なお8割位のカンジで気のりしていなかったのも事実。ところが、これまたタマタマ(笑)別の某店ジャンクコーナーで本機を手にしてしまったというのが運の尽き。「まぁ数千円だし」と自分に言い訳しつつ購入して実際にいじってみると忽ちその魅力に取りつかれてしまったのですから、やはりコレはタダモノではないのかも知れません。

巻き上げの感触は Canon に勝るとも劣らぬゴリゴリ振り(個体差ではない様です)、動作音もドライで「余韻」の類とは無縁、と余り感心しませんが、どっしりとしたボディと、触れると瞬時に切れるようなストローク感ゼロの電磁レリーズの組み合わせは快惑、RTS の真骨頂といったところ。139Q もそうですが、「電源スイッチもレリーズロックも存在しない」というところに、AEを有効に活用し「感性優先」を実現しようという“思想”を 強く感じてしまいます。

シャッターは横走り布幕、最高速1/2000sec.と“平凡”で、TTL調光もシャッター優先AEもありません。が、Zeissレンズの描写を絞りでコントロールしつつ自分の世界を切り取っていく「表現者」にこれ以上何の機能が必要でしょうか?

そういう目で改めてこの初代 RTS を眺めると、異様とも言える程に幅広く平らなペンタ部のデザインが、普遍的な美を湛えた彫刻の様にも思われてきます。シンプルで、飽きが来ない…とは家具でも服でも「良いデザイン」の代名詞のように語られる、いつも身の周りに置く品についての最大の賛辞でしょう。本機は勿論 “プロフェッショナルの道具” ではありますが、報道の現場に飛び込んで行く Nikon とは路を異にするもの。第一線を退いた今、大人の道具としてゆったりと使うのにこれ以上適したカメラも存在しない、という気がします。



( 続く → こちら




by photographer_you | 2013-07-11 00:24 | ’70s camera


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