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寫眞機萬年堂  - since 2013 -

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2014年 01月 02日

PENTAX LX (その4)

先ずは、明けましておめでとうございます。「寫眞機萬年堂」(再度強調。「カメラまんねんどう」と読んで下さいネ)、本年もお付き合いのほど宜しくお願い致します。

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引き続きLXのお話です。前回はかなり感覚的な表現(笑)に終始してしまいましたので、今回はもう少し客観的にいきましょう。

LXで優れている点はと言えば、第一にファインダーです。何しろ苦手なブランド(シツコイ)故に詳細を知らずはっきりとしたことが言えませんが、スクリーンは「砂ズリマット」であると思われます。しかし(或いはその分?)ファインダー像のキレは非常に優れていて明るさも十分。ピントの山の掴み易さは、自分の所有機中で最も優れた部類と断言できます。ピントをマット面で合わせるというのは、つまりはコンデジが行うようなコントラストのピーク検出を肉眼で行う、ということですが、LXではファインダー像の見え具合に優れている為、レンズのヘリコイドを指で送っていった時、行き過ぎることなくココだ!とピークで止めることが極めて容易です。

レリーズボタンの押し味も、中々に優れています。レリーズのポイントが「ただ一点」として感じられる程に鋭くはない、つまり押し込んでいった時に「これ以上押すと切れる」という境目が、カミソリの刃の様に薄いのではなくボール紙くらい幅がある感じなので、その押し味は私にとってのベストワンであるF-1Nには及びません。が、レリーズを押し込んだ状態で保持し、ファインダーに意識を集中しつつ“その瞬間”を待つ、ということは比較的容易。トータルの評価としては、決して悪くありません。

PENTAX LX (その4)_c0291635_0135445.jpg

ついでに…ボディ側のことではありませんが、絞り環の操作性が良いことにも今回初めて気付きました。レンズを横から見ると判りますが、絞り環は距離環(ヘリコイドリング)よりも一回り太く(径が大きく)一段高い場所にあるため、レンズ基部を掴んだ指で触れるだけで絞り環が極めて用意に判別できます。また絞り環の素材もプラではない?様で、ローレットも深めの溝が切ってあるため指掛かりも悪くはない。「絞り環の動作が固めでギクシャクする」という評価もあるとは思いますが、これは絞り環のクリックが1/2絞り毎(Canonと同じ)で小刻み過ぎるためガシャガシャと動く感じになっている分だけ損をしているのです。1絞り毎(Nikonと同じ)のクリックである方が、絞りの微妙な調節が出来てかつ操作感も良くなると思うのですが…。ともあれ、指への食い付きの良いローレットは固めのトルクに十分に見合ったものと言え操作性は良好だ、というのが私の評価です。

SMC-Mレンズは(先代のM42マウントのタクマーレンズ時代から変わらず)距離環にワザワザ不必要な“小窓”を設ける感じのデザインであったり、大きな白指標が「寅さん」のホクロのように野暮ったく出っ張っていたり(これは、手探りでもレンズ装着を容易に出来るようにするため…というメーカーの配慮ではある)、とデザイン上大いに気になる点があってこれまた個人的敬遠の対象だったのですが、想像以上に実用的な工夫が凝らされていることが理解されました。そういう目で見れば、このレンズデザインも「庶民的感覚の高級和風住宅」であるLXボディとの取り合わせは決して悪くなく(失礼…)、レンズ正面に、随分大きな文字で彫り込まれたレンズ銘・焦点距離等の表示も、ボディの「畳敷き的感覚」に見合ったものと思われてくるから不思議なものです。後期型の頃、シャッター速度優先AEにも対応したSMC-Aレンズは、LX前期型の時代を見慣れてしまっているからでしょうが、野暮ったいなりに洗練されてしまって(笑)ちょっと不似合い。

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以上、前回の話も含めて「未知の高級機」であったLXを大層褒めちぎっている様ですが、では欠点が無いのか?というと勿論そうであるハズがありません。

フツーに(Nikon FE辺りのAE機に慣れた感覚で)使おうとすると、先ず驚いてしまうのが「AEロック」が存在しないこと。この辺りの事情は、現代のデジイチに於いてレリーズボタン半押しや背面のボタン操作でAEロックを掛けられることに慣れ切ってしまっているから、という面もあるかも知れません。でも、LXの露出補正はNikonの絞り優先AE機(FE・F3等)とまるっきり同様に、巻戻しクランク周囲にロックボタン付きで設けられています。やってみれば解りますが、実際の撮影の際にこの部分で操作しろというのは、殆ど不可能というか非現実的。撮影の最中にサッと補正するにはAEロックは簡便で有用なのに、それが存在しないとは…。

AEロックの件はPentaxのAE機共通の思想なのかどうか未検証ですが、同社の仕様として共通であって、ちょっとイタダケナイのが、絞り環とシャッター速度ダイヤルの「回転方向の不一致」。ナンのことかと言えば、Nikonは「右に回すと露出が切り詰められる」、つまり、絞り値は大きく(暗く)なり、シャッター速度は速く(露光時間は短く)なる。Canonはその逆。なのにPentaxは、絞り環はNikon型、シャッター速度ダイヤルはCanon型、と折衷になっていて、操作感の上での統一が図られていない。純正の組み合わせでこうなってしまうというのは、慣れだと言われればそれまでではありますが、ナンでわざわざ分かり難い組み合わせを…。

結構問題になりそうなのが「ASA(ISO)感度設定ダイヤル」。巻戻しクランクと同軸に設置されていて、不用意に動かないように勿論ロックが設けられています。が、そのロック解除ボタンが同ダイヤル上の左側、つまり「何かが当たって押されてしまいそうな場所」にある。しかもボタンのスプリングが弱く、ボタン自体も大きめ。カメラをクロスで包む際やバッグの中に収められている状態で、簡単に設定が動いてしまいます。僅かな試用期間中にも2度ほど「知らない間にASA感度がずれていた」ことがありました。ここは、引き上げ式(リングの外周を持ち上げないと回せない)にするか、解除ボタンの場所を変え、大きさももっと小さくすべきです。同箇所に設置されている露出補正ダイヤルが、そのロックボタンをファインダー横の不用意に押されにくい場所に備えていること、しかも、そのダイヤル自体のクリックが「ロックなど不要なのでは」という程重めなのに比べて、如何にも練り上げ不足という印象です。

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これに比べれば操作頻度自体低いので余り問題にならないかも知れませんが、フォーカシングスクリーンの交換が行い難いのもちょっと困りものです。LXのフォーカシングスクリーン交換はファインダーの脱着とは無関係にマウント側から行います。そういう機構の場合、普通はマウント内の上部に「スクリーンの固定解除を行うための爪」が見えているのですが、LXではその爪は遮光版のような艶消しの板に阻まれてドコにあるのか判然とせず、交換用スクリーン付属のピンセットを用いても簡単には操作出来ません。余りガタガタやっているとスクリーンを傷つけてしまいそうで、実際に交換をやってみて解ったのは、人差し指の爪を使って引っぱるのが一番簡単で確実だということでした。

自分の知っているファインダー交換式のカメラ(Nikon F一桁シリーズやF-1N等)では、どれもフォーカシングスクリーンの交換はファインダーを外して「上から落とし込む」のでこれが常識と思っていたら、LXは違うのでちょっと驚きました。これは、フォーカシングスクリーンを外すと判るのですが、メーターの指針等(コンデンサーレンズ?に、シャッター速度の数字がある)が光路に残るためと思われます。まぁ風変わりな交換手順であること自体は差し支えありませんが、折角ファインダーが外せるのに…と、どうにも無駄に思えてしまうのと、ファインダー内の掃除をしたい時もあるので、やはり操作がし難いのは考えものです。また、ファインダー像自体は前述の通り極めて優秀な見えで全く問題ないのですが、シャッター速度の表示がファインダー視野内にあるというのは、ちょっとレトロに過ぎる。被写体の色や光線の当たり具合等によっては指標の数字が極めて見難くなってしまい、不都合です。

PENTAX LX (その4)_c0291635_016145.jpg

問題点ということではなく、LXの「変わった特徴」としてもう一つ挙げられるのが「巻き戻し時に、フィルムカウンターが高精度に逆転する」こと。例えば、No. 25、26、27と3コマを連続撮影してから、カウンターを見ながら3コマ分を巻戻し、各コマにそれぞれ改めて2回目の露出(多重露光)を行う、という芸当ができる。一般的には「多重露光可能」ではあっても、フイルムを送らずシャッターチャージだけをする機構がそれに当たるもので、巻戻して正確にコマを重ねられます…というのは、他に余り例がありません。デジタルの時代には既に意味の無い機構になってしまった、というのは仕方ありませんが、これも「ヘンに凝り性」なPentaxらしい仕様なのかも…。


という訳で、LXは「素性は良く、不思議な魅力のカメラ。凝った特質も備えているが、付き合い難い部分もある」と言えそうです。

by photographer_you | 2014-01-02 23:55 | ’80s camera


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